
少し前に見た映画ですが。
ドイツ語講座でこの映画のことを知りました。東西ドイツ時代の監視社会を描いた作品です。
私は、1981年の夏に"西"ドイツを旅行したのですが、私たちが旅していた街から数百キロのところで、この映画が描いていたようなことが繰り広げられていたのです。
東ドイツという国家の忠実な僕である主人公が、作家とその恋人を監視する(告発するための理由を捜しだすために!)中で、これまで自分が信じてきた世界と監視している人たちが生きている自由な精神社会のはざまで、苦しみながらも人間性豊かな人格へ変化していくのが感じられます。
ところで。 監視されている作家のコード名は「ラズロ」。これは、かの「カサブランカ」で、ハンフリーボガートがかくまう、イングリッド・バーグマンの夫の役名が「ラズロ」と同じ。
これって偶然?
主人公は、時とともに監視対象に思い入れが増していき、ついには彼らに有利な行動をとってしまう結果になり、仕事で降格されてしまいます。
けれども、もしもこういうことが本当に起こっていたら、裏切った人にはもっと厳しい処罰が待っていたのかもしれない…なんて思ってしまいました。
作品の中で、一度しか弾かれなかったピアノ曲「善き人のためのソナタ」が邦題になっているのはどうしてなんだろうと思っていました。最後で納得。
そこを見た後は、原題"Das Leben der Anderes(他人の生活)"よりも希望が感じられるようで、「善き人のためのソナタ」の方が好きです。
この映画の主人公を演じたウルリッヒ・ミューエは、東ドイツ時代には「監視される」立場だったそうです。情報提供者は当時の妻。この件をめぐっては 後年いろいろなごたごたや裁判沙汰もあったようです。監視社会は悲しいです。
でも、何よりも悲しく思ったのは、彼が今年の7月に亡くなっていたこと。
lazynana的トリビア
ウルリッヒ・ミューエが出演している作品の中に、邦画がありました。
太平洋戦争のころのゾルゲ事件を描いた「スパイ・ゾルゲ」(篠田正浩監督)に、ドイツ臨時大使になる軍人の役でした。